REPORT レポート
第10回 福島起業塾 実施レポート
年末も差し迫った12月21日。忙しいのは社会人だけでなく学生も同じなのか学生の数は伸び悩む。聞いてみると年内最後の授業だったらしい。最終的に15,6人が集まり、「現役経営者と一緒に考える、何を志すのか?事業とするのか」をテーマに第10回起業塾がスタートした。
八尋氏は大学卒業後、株式会社リクルートに入社しサラリーマン生活を送るがその6年弱の短期間で「社会で働くと言うこと」「自分で会社を興す志」の2点を学んだ。元々企業家精神旺盛な社員の多いリクルートにあって、入社当時から「いつか起業する」という思いを持った同僚は多く、実際平成3年の入社時に800人いた同期の内700人は現時点ですでに退職していると言う。離職率が高いことは一般的に言えば会社の魅力がないと言えるのだがリクルートではむしろ逆。この会社のOB、卒業生たちは多方面で活躍しているが、若い年齢での退職を応援する制度すらあり、転職や企業を奨励していると言える。
その八尋氏は退職後、一旦家業を継ぐ。しかしながらこのまま家業のみで終わらせないところがリクルートの遺伝子を持つ証ではないか。学生時代から精通してきた「スポーツ」をビジネスにする決心をして、当時アメリカでスポーツビジネスを学んでいた同僚とスポーツエージェントの世界に入っていく。
当時、野茂秀雄が現役で活躍していた時期であり日本のプロ野球選手はアメリカメジャーリーグに対して「夢ではなく現実」として受けとめ始めていた。多くの日本人選手がアメリカに行きたい、行けるんだと思い始めた時代であった。その後松井稼頭央選手、井川慶選手など数名の日本プロ野球選手をアメリカに送り込むことに成功する。一気にこのエージェントビジネスが広まっていく予感を感じていた。
しかしながら設立した会社の社員数が増え徐々に大きくなってくると、組織としての安定性、中長期的なビジネスプランの必要性を八尋氏含め役員は感じて始めていた。選手の活躍如何によって売り上げが大きく変動するエージェント業はリスクが伴う。社員が増えれば尚更のことと。しかしながらそう簡単に安定的な事業は見つかるものではない。結果として野球選手だけでなく、ゴルフ選手やバスケット選手など契約選手はどんどん増えて行った。そして会社経営はどんどん行き詰ってきた。
そのなかで目を付けたのが、球場に行くとよく目にする看板広告。その看板広告に多くの大学が出稿している。大学側は少子化に伴い大学ブランドを宣伝したいのであろう。しかしながら野球場の大学広告はテレビ放映権の売買が鈍化したコンテンツに置いては効力を発揮しにくい。また、大学生のターゲットである高校生が球場にたくさん足を運んでいるとは思えにくい。そこで「大学生がスポーツの現場を通じて学ぶ体験型授業」を通じてスポンサー化するメソッドを開発した。結果、球場側(球団)、大学側、そして学生それぞれがwin-winとなり評価の高いプログラムを作ることができた。もちろんこれは今でも社内の重要な商品となっている。
上記の例で示されたように「会社の成長とともに求められる新たなビジネス領域、そして社会のニーズに合ったビジネス」これら二つが絡み合った時に事業は成功すると語った。
最後に「会社の成長とともに求められる新たなビジネス領域、そして社会のニーズにあったビジネス」を発掘するのに必要なことは何か?それは“高い情報感度”であると付け加えた。その情報感度を上げるには。それは“本気”で取り組むこと。すべては“本気”がスタートだと訴えかけた。「学生たちにとってまずは“本気”になれるものを早く見つけてほしい」とメッセージを送り第10回目の講義は終了となった。