REPORT レポート
第9回 福島起業塾 実施レポート
新幹線から福島駅に降りたった講師の佐藤大吾が改札を出た瞬間、駅全体がゆっくり大きく傾いた。
その後長い揺れが続き、あちこちで悲鳴や怒声が響いた。
「震度5」
モバイルでチェックしたニュースサイトには大きな赤い文字で記されていた。
12月というのに汗が吹き出し、膝が震え、心拍数が上がるのがわかる。原発の方向を確認し、駅員に状況を確認。次々と頭をよぎる悪夢を打ち消し、とにかく落ち着こうと息を整える。
幸い大きな余震は続かず、周囲の人々も落ち着いてきたようだ。
今日の福島起業塾は開催されるのか、中止になるのか。福島駅から徒歩圏内の会場まで足早に向かい、状況を確認したところ、多少の渋滞が起きているものの、多くの受講予定者は会場へ向かっており、少し時間を遅らせて開催するとのこと。
第9回目福島起業塾はこうした波乱の幕開けとなった。
福島起業塾はその名の通り、起業を志す方々を対象とした講義だ。
これまで複数回の起業経験を持つ佐藤大吾は、実際の体験から学んだ起業ノウハウや、陥りやすい失敗などについて、具体的なエピソードを交えて語った。
世界最大の寄付サイトである英国JustGivingを日本に誘致し、2010年にJustGiving Japanを設立して以来、 「日本の寄付文化創造」を目指して事業に取り組む佐藤は、当時自分が悩んだことと同じ悩みを、「あなたが社長ならどんな決断をするか」と受講生に投げかけ、考える機会を作る。
いくらNPOといえども、収入がなければ倒産してしまう。 JustGivingという寄付サイトを継続的に運営するためにはどうすればいいだろう、といった感じだ。
「ボランティアで運営されるべき」、「NPOから登録料をもらえばいい」、「手数料をもらえばいい」いろんな意見が出た。もちろん正解などない。佐藤が話す事例はたまたま佐藤が選んだ経営だ。
こうして講師から質問され、受講者が自ら考え、講師に考えをぶつける。
それに対して、講師から「僕はこう思う」という反応が返ってきて、さらにそこからディスカッションが深まっていく。。。
まだ経験が豊富ではない受講生にとっても想像しやすかったのではないだろうか。
「この福島の地から一緒に仕事ができる仲間が誕生するのを楽しみにしています」
まだまだ大変な生活が続くにもかかわらず、弾ける笑顔で臨んでくれた受講生たちに対して、講師の佐藤もまた全力の笑顔で挨拶を締めくくった。